- はじめに
- 遺言書の種類
- 公正証書遺言の作成
秘密証書遺言について
秘密証書遺言とは 、遺言者が作成し、公証人がその存在を証明する遺言のことです。
現実的にはあまり利用されていません。
秘密証書遺言の効力発生要件
秘密証書遺言の「遺言書としての効力を発生させる」ための要件と手順は以下のようになります。
1)遺言者が遺言書を作成し、署名・押印する
: 本文の作成は、ワープロや代筆も可能です(署名は自筆で、押印は認印でも可)。
また、日付は不要です。
2)遺言書を封筒に入れ、遺言書に用いたのと同じ印で封印する
: 封入・封印は、必ず遺言者本人が行います。
3)証人と共に公証役場に行き、公証人に遺言書を提出する
: 証人は2人以上必要になります。
このときに、公証人に対して、自分の遺言書であることを述べます。
4)公証人が、日付、遺言者の住所・氏名等を封書に記載する
5)公証人・遺言者・証人の全員が封書に署名・押印する
秘密証書遺言の利点
秘密証書遺言は、上記の要件を満たしていれば、遺言としての効力が発生し、おもに、次のような目的や理由があるときに利用されます。
■ 遺言書の内容を秘密にしたい
: 秘密証書遺言は、証人と公証人には、封印された封書しか見られていないので、遺言書の内容
を秘密にすることができます。
■ 遺言書が本物であることを証明したい
: 公証人がその存在を証明しているので、遺言書が本物かどうかという疑いを避けることは
できます。
■ ワープロや代筆で作成したい
: 何らかの理由で、自筆での遺言書作成ができない場合、秘密証書遺言書は、ワープロや
代筆での作成も認められています。
秘密証書遺言の問題点
秘密証書遺言には、次のような問題点をあげることができます。
1)遺言書を どこに保管するか ?
: 秘密証書遺言には公証人が関与しますが、遺言書自体は遺言者自身が保管しなければ
なりません。
結果、相続が発生したときに肝心の遺言書が発見されない、という事態も起こりえます。
2) 紛失・変造 のおそれあり
: 紛失してしまうおそれや、封印されているとは言え、変造の可能性もまったくないわけでは
ありません。
3) 書かれている内容 は十分か?
: 公証人は秘密証書遺言の内容は見ていませんので、いざ開封してみた結果、書かれている
内容が不十分なため、相続財産等を特定することができないといった事態も起こりえます。
4)すぐに相続を開始することができない
: 秘密証書遺言は、発見してもすぐに開封することができず、家庭裁判所で 検認 という
手続きをとる必要があります。発見してもすぐに相続を開始することはできないのです。
5)利害関係のない証人を最低2名用意しなければならない
6)証人と公証人等に支払う費用がかかる
以上のことから、秘密証書遺言書は、現実的にはあまり利用されていません。